ブラジル体験を語ってもらいました

 1年間や半年間の語学、音楽、デザインの勉強、研修、あるいは日本語教師などのボランティアなどのために、沢山の人がブラジルにチャレンジしています。これまでにチャレンジした人は120人を越えます。
 これまでのチャレンジャーたちは、ボランティア・研修先で暖かく受け入れられ、各自の目標を定め活躍してきました。これからも、チャレンジャーたちはますます増えそうです。
 体験した人たちの報告を紹介しましょう。
 

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2013/02/20

数多くのことを与えてくれたブラジル

Tweet ThisSend to Facebook | by CARLOS
数多くのことを与えてくれたブラジル

報告者・Aさん
(2009年5月記)


 2008年9月より、ブラジル、リオデジャネイロ州ペトロポリスで約半年間お世話になった。それまでに2度リオデジャネイロに住んでいたが、家族と暮らしていたため日本と変わらない生活を送っていた。しかしブラジルに興味を持ち、大学でポルトガル語やブラジルについて学ぶなかで、ブラジルの生活をしてみたいと強く感じた。
 それでは、筆者がチャレンジブラジルや受け入れ先の方々にお世話になった経緯や、ブラジルでの生活についてご報告させて頂きたい。

[渡伯まで]
 まず、ポルトガル語を磨きたいという目標を第一に訪問先を検討した。チャレンジブラジルの説明会に伺い詳しい説明を受け、細かい質問や相談も親身に聞いて頂いた。以前住んでいたリオデジャネイロの近くということと教育分野に興味があることを考え、またペトロポリス受け入れ先の安見様ご夫妻の活動内容、人間性の素晴らしさを伺い、ペトロポリスへの滞在を希望した。その後安見様ご夫妻や当時現地に滞在していたチャレンジャーの方と連絡をとり、何度も相談にのって頂いた。わからないことだらけであったが、お忙しいなかまめに連絡をとって下さった。
 滞在先が決まると、チャレンジブラジルの方に紹介して頂いた旅行会社を通して航空券を手配した。普段使っている航空会社の希望など、筆者の意向にも柔軟に対応して下さりとても助かった。

[過ごし方(ボランティア活動内容・感想)]
 12月から2月頃までは夏休みやカーナバル休暇と重なっていたためほぼ活動はなかったが、その他は平日に活動に参加させて頂いていた。空いている時間や週末は友人と出かけ、大きな休みには旅行をするなどして過ごした。活動の詳細は以下の通りである。
 火・木…ペトロポリス成人向け学校
 月・金…公文
 水…識字教室
本来、火~木曜日は、活動の中心であるペトロポリス成人向け学校があるのだが、筆者の滞在期間中は他のチャレンジャーの方もペトロポリスに滞在していたため、ポルトガル語習得のためになるべく活動は別々にとのご配慮を頂いた。そこで識字教室という別のボランティア先を探して頂き、2人のチャレンジャーで交互に活動に参加するという形をとった。

1.ペトロポリス成人向け学校
<活動内容>主に受付業務をやらせて頂いた。生徒の出席や教材の交換、コンピューターへの情報入力などである。仕事内容は安見様ご夫妻に丁寧に教えて頂いた。また語学習得という筆者の目標を常に考えて下さり、ブラジル人と交流する機会を多く与えて下さった。11月には授業を行い、日本文化をテーマに日本の食文化や年間行事などを紹介した。
<感想>「ボランティアをする」のではなく常に「学ばせて頂いている」という気持ちで過ごした。実際に受付業務だけでなく、先生方や生徒さん達と話しをする機会が多くあった。教育について話したり、日本について質問されたり、世間話をしたりし、どの会話も筆者にとっては非常に勉強になった。また生徒さん達と関わることで、ブラジルの教育問題の現状を垣間見ることができた。

2.公文
<活動内容>日本語学習の手伝いをさせて頂いた。教材の添削や会話練習など、生徒さんと直接関わる仕事が多かった。またポルトガル語の教材をやらせて頂き、空いた時間には「生徒」として公文に通った。
<感想>日本語について改めて考えさせられ、難しさを痛感した。しかし日本語に興味のある様々な年代の生徒さんと交流するのは楽しく、友達も多く出来た。互いの文化を教え合い、有意義な時間を過ごせたと思う。公文の方々にも本当にお世話になり、ブラジルの生活を知るあらゆる機会を与えて頂いた。

3.識字教室
<活動内容>比較的年齢層の高い人を対象とした識字教室で、アルファベット学習の手伝いをさせて頂いた。
<感想>ブラジル人にポルトガル語のアルファベットを教えるという作業なので、大学で勉強した細かい文法事項を存分に思い出す良い機会となった。活動内容は難しかったが、皆さんに良くして頂き、話し相手にもなって頂いた。文字を学ぶ生徒さん達と一緒になって学ぶことができた。「文字が書けない」とはどういうことかを目の当たりにし、頑張って勉強している姿を見ると気合が入った。文字が書けないことを当たり前に思ってはいけないと思い、誠実に、少しでも役に立ちたいと感じた。貧富の差、また社会格差の大きい国であるので、様々な立場にあるブラジル人と接することはブラジルを知るのに重要である。また、普段日本人と接触することのない生徒さん達は筆者の存在に大変興味を持って下さり、互いの文化を伝え合えたことは素晴らしい経験となった。
 
[生活面]
 住む場所が見つかるまでの1週間程は安見様ご夫妻宅に滞在させて頂いた。以前のチャレンジャーの方の滞在場所や新たに探して頂いた場所を、安見様ご夫妻と共に何件か尋ねた。語学習得という面から、ブラジル人と共同生活することを理想としたが、適当な物件を見つけることはできなかった。比較的安全で交通の便が良く、快適な場所をと考えると、ひとり暮らしのアパートに住むことにした。家賃は比較的高かったが、家具付きでキッチン・バス・トイレが付いており、立地も良く快適であった。
ひとり暮らしということで、なるべく外に出て人と交流するように心がけた。食事も友人の家に呼んでもらったり、誰かと食べたりするようにした。アパートは街の中心地にあったため、買い物やコインランドリー、銀行などすべて歩ける距離にあり不便はなかった。交通手段はバスやコンビ(バン)を主に利用した。治安に関しては様々な情報があったが、「どこでも」危険と常に思って行動していた。
●参考のため、私の生活費を書いておく。
 家賃…650レアル
 光熱費・水道代…20レアル
 食費(外食・自炊)…300レアル
 ※当時のレートは平均して1レアル=40円前後
 立地が良かったため交通費は殆どかからなかったが、交際費などの出費もあった。

[反省]
 まず、期間設定を半年にしたことである。筆者の場合、やっと言葉の不自由が少なくなり、これから定着させていくという時期に帰国となった。半年間ということで、始めから積極的に勉強するよう心がけたことで会話は早いうちに上達したが、もう半年あればさらに定着し、磨きをかけられたかもしれないと思うと残念である。
次に体調管理である。深刻な病気はなかったが、軽い風邪や胃痛などは頻繁にあった。初めてのひとり暮らしや異国での生活のストレスからかもしれなかったが、自己管理の大切さを身にしみて感じた。

[感想]
 今回のブラジル滞在の収穫のひとつは、語学である。半年間という短さのプレッシャーがあり、始めから積極的に会話するよう心がけた。話すには勇気がいるが、ブラジル人の優しさや寛大さのおかげで失敗の不安や恐怖を克服することができた。語学力というのは、会話の中身によるものであると身をもって感じた。以前は「言語は生活のツールでしかなく、とにかく通じればよいもの」と考えていたが、ブラジルで考えが変わった。言語はコミュニケーションをはかってくれるだけでなく、その人の人生や人柄、考えを表す。さらにはその国の歴史、習慣、文化を表す。つまり言語を学ぶことは、それらすべてにアプローチをはかれるということであり、また母語について深く考え、知る機会を与えてくれる。
 語学以外の収穫は「ブラジルの生活」を満喫できたことである。この半年間は以前住んでいた時の生活とはまるで違い、ブラジルが身近に感じられるものとなった。特に安見様ご夫妻には、独立記念日のパレードや結婚式、大学の授業など様々な場所に連れて行って頂いた。その先々で「日本人」として参加することの責任を感じ、気の引き締まる思いがした。また公文では、生徒さんのご両親でファッション関係の仕事をしている方を紹介して頂いた。ブラジルのファッションにも興味があったため、工場で生産の過程を見られたりファッションについて話し合うことができたりしたことは大変有意義であった。
 友人も多くでき、フェスタ(パーティ)や学校の卒業式、習い事先などに連れて行ってもらったり、家に呼んで家族を紹介してもらったりした。彼らは本当に優しく、親切だった。互いに学び楽しみ、良い時間を過ごすことができたと思う。ブラジルでは友達が作り易いということ、そして人との繋がりが濃いということを深く感じた。日本では「友人」と「他人」の区別がはっきりしているが、ブラジルではそれがあまり顕著ではない。言葉もろくに話せない筆者のような外国人に興味を持ち、「友」として心から受け入れてくれた人がほとんどであった。感謝してもしたりない半年であった。相手を受け入れ、心からもてなすということを学んだ筆者は、今度は是非反対の立場で、と強く感じている。
 また公文での友人が多かったため、彼らの多くは日本に興味を持っていた。日本に関心があると友達になりやすいという利点があるが、それだけではなく、日本や日本語について多くの質問を受けるため、自国の言語や文化のことを改めて考える機会を与えてもらえる。そして日本について学ぶ彼らを見て、日本人であることに誇りを感じ、責任を持って行動したいと思うようになった。彼らとは、今でも交流が続いているし、今後も関係を大切にしていきたいと思っている。
 とにもかくにも、学ぶことの多い半年間であった。努力をすること、忍耐力を持つこと、目的を持つこと…。なかでも、自分の意見をしっかり持ちそれをはっきりと自分の言葉、しかもポルトガル語で伝えることは、日本では学べなかったことである。自分の意見を持つということは自分を理解することでもあり、自らと正直に向き合わなければならない。困難なことであったが、ブラジルで暮らし交友関係を築き「友人」として認められるほど、それは必要なこととなっていった。
 何より今回の滞在で感じたものは、感謝の気持ちである。半年間で受けた恩恵は数え切れず、一瞬たりとも感謝をせずにはいられなかった。受けたものは筆者だけにとどめず、これからは恩返しの気持ちを忘れずにいようと思っている。

‐最後に‐
 今回のブラジル滞在に関わって下さった方々、本当にありがとうございました。ペトロポリスの地にしっかりと根付いておいでの安見様ご夫妻が日系社会に与えた影響は非常に大きいと実感しております。心豊かなおふたりを尊敬申し上げます。今回の滞在は、筆者にとって人生の宝物となりました。貴重な体験をさせて頂いたことに、深い喜びを感じております。それはすべて、チャレンジブラジルの皆様と、安見様ご夫妻なしには成し得なかったことであります。本当に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 また公文家族のようにお世話をして下さった方々、支えてくれた友人、ブラジルでお世話になったすべての方々にお礼を申し上げます。そして、家族と、良い意味で大雑把な私にしてくれたブラジル、くだらないことよりも大事なことに気づかせてくれたブラジルに、ありがとうと言いたいです。

18:28 | ブラジル体験記